記事広告を減らすこと。収益の仕組みを変えること。そして海外発信。2018年、私の目標

こんにちは、塩谷舞です。

ちょうど1年ほど前。厳密には11ヶ月前、ここmilieuを立ち上げました。

この1年で本当に様々なことがありました。生まれて来てから最も、神経を使った1年だった気がします(笑)。

 

尊敬する方々のお話を聞いて、それを自分の中で何度もなんども咀嚼して、考えと共に記事として世の中に発表する。

技術的には何一つ目新しいことをやっていないのですが、それでも人の思想を預かるということ、milieuという自らの庭を守ること、前回の記事を、期待を超えること……何度も逃げられない勝負に向かっていく感じは、時にゾクゾクして、時に逃げてしまいたいくらいに恐ろしくて、でもやはり、これは天職だと感謝する日々でした。

ただ、やはり、どこか逃げていたんだな、とも思っています。

 

「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」

 

これは2013年にコピーライターの山﨑博司さんが書かれたもので、はじめて見たときは衝撃を受けました。あまりにも良いコピーではあるのですが、私は記事を書くとき、自分の中のどこかにこれが「制御」の言葉として掲げられている気がします。

 

私にとっての正義は、誰かにとってはナイフかもしれない。だから私はここmilieuで何かを伝えるとき、必ずといっていいほど、自分と反対側にいる人のことを考えます。

この意見に傷つく人はいないか? 強く断言してしまうことで、苛立つ人はいないだろうか?

そうしてぐるりと見回しながらやって来たからか、milieuを立ち上げてから、記事が炎上する……ということは特にありませんでした。もちろん批判はいくつもいただきましたが、そのほとんどはまっとうな意見であり、改善に繋げさせていただくことが多かったです。

ただ、あまりにも周囲の声を気にするあまり、私の「オピニオン」はいつのまにか、このような滑稽なことになっていないか?と。

「ご要望をいただいたため、今日は頑張ります!…もちろん中には体調不良で頑張れない人もいらっしゃると思うので、そんな人はご無理なさらないでください。私個人のスタンスとして、今日は頑張ろうと思っているだけで、それはけっして全ての方に強要してはなりません。それでは、僭越ながら始めさせていただきます。よろしくお願い致します。」

 

もちろんこれは極端で滑稽な例文ですが(笑)、こんな言い訳だらけの長文、まぁあまりにも回りくどい。一言で済むのに、周囲の目を気にしすぎた結果の駄文です。私の記事はほとんどが7000文字を超えてしまうのですが、それはひとつ、自信のなさの表れでもあったかもしれません。


今年は、アメリカへの引っ越しという、大きな環境の変化がありました。(実際のところ今は東京で、明日からまたアメリカ…という落ち着かない生活ではありますが。)

アメリカ、それもニューヨークのような場所にいると、いかにみんながみんな、マイノリティであるか、ということを感じさせられます。

ブルックリンにあるIKEAのフードコートで昼食をとっているときも、隣のテーブルは中国語、反対側はフランス語、その後ろは英語……と、人種も国籍もみんなバラバラです。一足早くアメリカに完全移住した夫は今シェアハウスで暮らしていますが、ドイツ人とアメリカ人のシェアメイトは、それぞれライフスタイルも常識も異なります。

ニューヨークは、自分を強く持つことでしか自分を保てないような場所です。空気を読む、だんなんてことはナンセンス。むしろじっと空気を読んでいる間に、自分のやりたかったことを奪われてしまう気がします。

そんな場所の空気に触発されたこともあり、「もう、守らなくてもいいんじゃないか?」と思えてくるようになりました。

 

数万人が自分のメディアを読んでくれるようになった。
イベントを開催すると、百人以上の人が来てくれるようになった。

そんな状況でも私は自分に自信を持たずに……というか、自信を持つことで叩かれることを恐れて、ブツブツと小さな声で長い言い訳をしてしまっているのですが、もう大きい声で、しっかり自分の意見をハッキリ話そう、と決めました。

舞台の上に既に立っているのに、小さな声でボソボソと喋るのはもうやめにします。

 


ここまで精神的な話をこれまたブツブツと唱えてしまっていたのですが、2018年のmilieu、そして私の具体的な指針をお伝えします。

 

 

1.記事広告を、減らします

 

これは、かなり勇気がいることです。だって、milieuの収入源、ほぼ記事広告ですから(笑)。

2017年は、記事広告をmilieuで8本手がけさせていただきました(あれ、意外と少ないな…)。

どれも妥協していないし、「記事広告だから、ただただ、文脈ガン無視して褒めている」というものでもありません。そもそも、私が書くことの必然性が低いものは、一切お受けしていません。クライアントも、日頃のmilieuや私のスタンスを見てご依頼いただくことがほとんどなので、変な圧力をかけられることもありません。むしろ私がクライアントに無理を言うことの方が多かった気がします。

記事広告の好きなところは、普段取り扱わないものについて思考するきっかけになること。自分の視野を広げてくれるありがたい存在です。アシックスさんからご依頼いただいたアスリート展のレポートなどは、まさにそう。

だから今後も「ゼロ」ではなく、相性の良いもの、視野を広げてくれそうなものはお受けしていきたいです。

が!やっぱり、時間は有限です。「これを今すぐ記事にしたい!」という衝動が走っても、抱えている締め切りが多ければ多いほど、投げ出すことは出来ませんし、自由に動ける範囲は狭まります。熱量のピークで取材や執筆に取り掛かれないのは、大きな痛手です。

だから、記事広告は減らします。

 

2.自分の文章や時間の価値を高めていきます

 

じゃあ、どうやって稼いでいくのか?

これまで、「自分の文章を読者の方に売る」といったことは、ほとんどしてきませんでした。VALUは細々とやってみていますが、有料noteは一度も書いたことはないし、書籍のご相談もお断りしてしまうことばかりでした。

インターネットでずっと無料で読んでもらうのが当たり前だったので、怖かったんです。絶対に出てくるであろう「ついに、課金するんですか」という批判が。

ただ、最近私はNewsPicks(月額1500円)とNETFLIX(家族で月額950円)ばかり見ているのですが、面白いんですよ。テレビは無料だけど、相撲の喧嘩問題が多すぎて見ていられなかった。しかしNewsPicksには質の高いインタビューが溢れていました。

一箇所の広告主からたくさんいただくのではなく、多くの読者の方に少しずつお金を払っていただく。そのかわり、価値あるものを一生懸命生み出す。

あまりにも当たり前のことですが、私のようなネット発の人間には、恐ろしく高い壁でした。有料noteがかなり浸透した今になってようやく……という、超・後発組ではありますが、ようやく自分への自信がついたので。

    • 書籍を出すこと
    • 長らく放置していたnoteを、しっかり使ってみること
    • 自分の時間を販売するタイムバンクを始めること

この3つは、2018年に必ず実行していきたいことです。milieuは変わらず無料で読める場所にしていきたいので、これからもご愛読いただければ嬉しいです。

タイムバンクのような、インフルエンサーや著名な方々が横並びに出てきてランク付けされるようなサービスからはこれまで逃げていたのですが(だって戦闘力が数値化されて怖いんだもん…)まぁ1つ殻を破ってみようかな、という挑戦です。

宣伝ですが、本日18:30から私の時間が販売開始されるとのことです!(この記事、いかにも年の瀬の締めっぽいのですが、このリリースがあるので慌てて公開しました。笑)

 

3.日本のクリエイティブを海外へ発信するメディアを立ち上げます

これは、一番頑張りたいところです。そのために人員も採用中です(応募は締め切りましたが、非常に多くの国からのエントリがあり涙ぐんでおります)。

ニューヨークに拠点を移すぞ、という中で一番「これはやばいな!」と痛感したのが、情報の断絶です。インターネットに国境はないというのは、理想論だと実感させられました。

アメリカで開くAppleMusicでは、多くのJ-popが権利問題で聴くことが出来ません。フランス旅行中に元SMAPのホンネテレビが放送中だったのですが、AbemaTVもあちらでは見ることが出来ませんでした。YouTubeでも、多くの日本の動画が「お住いの地域では再生できません」となってしまいます。

インターネットにも、国境は確かにありました。
権利の壁と、言語の壁。そして視野の壁、というものが立ちはだかっています。


過去、milieuの記事を1つだけ英訳したことがあるのですが、思うようには広まりませんでした。

当然、私は英語圏のフォロワーもほとんどいないし、私の文章を英訳したら、地味に韻を踏んでいるところとか、細かな表現のこだわりが、全て削ぎ落とされたダラダラとした長文になってしまいます。(たまに、韻踏んでるんですよ…)広まらなくて当然です。

あと、私の記事はよく「エモい」と評されるのですが、これもかなり日本のドメスティックな感情なので、エモみをもって輸出するのも難易度が高いです。

 

アメリカに拠点を移すからといって、英語でエモい記事を書いて、日本と同じようにバズらせることは99.9%無理です。絶対に無理ゲーだし、負け戦。費用対効果も低すぎる。だからさっさと諦めました。

そこで力を入れたいのが、Instagramです。安倍総理までも「インスタ映え」を国の戦略にと掲げている今、なんだかツッコミが飛んできそうですが、2018年は徹底的にInstagramを軸にしたメディアを作ります。

具体的にいえば、日本のクリエイターを紹介するInstagramアカウントを立ち上げて、少なくともバイリンガルで発信し、将来的にはWebメディア化します。

日本のクリエイターは、職人的で、チームで物作りをすることに長けている…と言われています。だからこそ、スタジオジブリやチームラボのような「集団」でのクリエイティブが強いのでしょう。

そのぶん、個人で大きな影響力を持つクリエイターは、あまり多くはありません。職人集団の間では、SNSでのセルフブランディングを頑張ること自体がすこし「痛い」行為だと嘲笑されていたり、そもそも自己顕示欲が低く、物作りに熱中するタイプが多いからでしょう。

ただ、海外にはセルフブランディングに長けたクリエイターが多くいます。その主戦場は主にInstagramかBehanceです。

 

 

インフルエンサーマーケティングはもちろん世界中で流行している訳ですが、こういったクリエイターはInstagramやBehanceで発見され、有名企業から直接クリエイティブ制作のオファーがかかるそうです。

その現象の良し悪しを語ることは今はしませんが、日本ではその方面へアンテナを張っているクリエイターは少なく、やはり「黙々と作ること」「良い作品があれば誰かが認めてくれる」といった姿勢が美徳だとされています。

もちろん日本にも、Instagramで作品を発表して、大きなクライアントを得ているクリエイターはいらっしゃいますが…以前沖縄案件をご一緒したフォトグラファーの保井さんは、その代表格ではないでしょうか。(彼は、Appleにも写真提供をしています)

 

Everyday life in Tokyo #RECO_ig

Takashi Yasuiさん(@_tuck4)がシェアした投稿 –

ただ、多くのクライアントが、日本のクリエイターを探すのに苦労していると聞きます。Webで、バイリンガルで、情報発信をしていないからです。奥ゆかしすぎ問題です。

日本のクリエイターからは広告代理店がよく「悪の組織」かのように言われますが、海外の企業からすれば、電通や博報堂を頼らなければ、日本のクリエイティブなものがよくわからない、という現実もあるでしょう。

控えめであること、奥ゆかしくあることが美徳とされるこの国は、その心地よさがある一方で、宝物を自ら隠してしまっているのです。

 

だからまずはInstagramで、日本の質の高いクリエイティブを丁寧に紹介するアカウントを作ること。milieuのような独自ドメインのサイトは、インターネットの中で無人島のように孤立してしまいますが、交通量の多いInstagramであれば、勝算は十分ある。負け戦ではありません。

そして、そのアカウントを育てて流入元を確保した上で、独自ドメインのサイトを立ち上げます。ここmilieuのように、長文でしつこく語るのではなく(笑)もっと使いやすく、このクリエイターはどこに住んでいるのか?英語はOKか?得意な表現は何か……? そんな「依頼する側」にとって有益な情報を集めるtoBメディアが必要です。

いわゆる、クリエイター紹介に特化したキュレーションメディアのようなものをイメージしていただければ、近しいかと思います。(キュレーション…という言葉は、仮にも大学で美術を学んでいた私には重すぎる言葉なので、軽々しく使いたくはないのですが。)


雑誌の休刊が続き、キュレーションメディアが淘汰されていく今の日本で、「オピニオンメディア」であるmilieuを立ち上げることは、私にとって絶対に必要なことでした。

自分の意見と共に対象を紹介することで、対象を知っていただくことはもちろん、milieuや塩谷舞といった固有名詞も覚えていただき、繰り返し訪れていただける。バイラルメディアでは実現できない、かなり偏った方々がmilieuを訪れてくださるようになり、その読者はmilieuにとっての宝です。

ただ、たまにテレビなんかに出演させていただくと、話の筋とはまったく関係のない私の容姿についてバッシングを受けたりします。知らない人に突然ブサイクと言われても、べつにまったく本質ではないのでスルーしていますが、まぁ嫌ですよね……。

 

オピニオンメディアとして、自分の意見を携えて、もっと多くの人に読んで欲しい……そう願えば願うほど、広い層に届くほど、本筋とは異なる罵詈雑言が飛んでくる。まるで地獄のような世界が待ち受けている、というのも事実です。

だからこそ、日本語での狭いオピニオンメディアと、バイリンガルでの広いキュレーションメディアを使い分けていくこと。それが2018年の目標です。


 

高校生のとき、一番悔しかったこと。それは、自分より絵の才能がある同級生が、おとなしい子であるために、その才能を「高校」という社会でスルーされて認識されにくかったことです。

結果、自己発信が上手な私のようなタイプに、修学旅行のしおりの表紙のような、絵を描く仕事が集中していました。

私は、自分より才能ある人が、スクールカーストや、大きな組織の影響力に、かき消されてしまうのが心底耐えられません。その社会の圧力は、豊かな才能や、育まれていたはずの文化を、踏み潰してしまうからです。

それが嫌だから。そして、生まれたばかりの傑作を誰よりもはやく楽しみたいから、18歳のとき、私はクリエイティブの価値を高めるような仕事に就きたいと願いました。

 

ハタチのとき、雑誌を作り、メディアとして生きていこうと決めました。

私ひとりで出来ることなんて、たかが知れてるかもしれません。でも、日本のクリエイティブシーンでの情報発信力は、もう10年近く血眼で育ててきました。SNSのフォロワー数も、人脈も、私の武器です。

 

この武器を駆使して、ヘルシーで豊かな情報発信に邁進していきたいと思います。

 

 

Text by 塩谷舞(Twitter |Instagram

milieuは今後、海外での取材も増やしていきます。まずはパリ。次はベトナムに行く予定です!

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