「ライターになりたい!」というニーズが急増する今。労働集約型モデルを、どう変えていく?

Text by 塩谷舞(@ciotan)[PR]

「ライターになりたいです!」

純粋にそう願う人と、ここ最近、どれだけ出会っただろうか。
ライターという仕事は、まさに過渡期である。

本来、雑誌や広告がトップダウン形式で作られていたら、仕事の流れの中では「末端」に位置していたライター、という仕事。

が、SNS時代に突入してからというもの、マスメディアの影響力と反比例して「末端」は強くなった。

多くの出版社は、SNSで人気の漫画家をリサーチするようになった。Web上の広告案件では、Twitterでライターを探したり、Instagramでカメラマンを探したりすることなんて日常茶飯事だ。

「選ばれし者」だけが持てたはずのメディアを、発信力を、今は誰しもが持っている。

そしてライターは、副業でも、地方でも、子育てをしながらでも参入できるという気軽さも魅力だ。だから裾野は、年々広がるばかり。

一方で、業界全体が過渡期すぎるために、クライアント側からも、ライター側からも、困惑する声は非常によく聞く。

「相場はいくらなの?」
「どこにお願いすればWebでしっかり成果が出るの?」
「どうやって価値を高めればいいの?」
「新規参入が多い中で、質はどうやって高めていくの?」
「新規の案件を得るには、やっぱり東京に行かなきゃいけないの?」

 

……などなどなど。

 

出版業界はページ単価がだいたい決まっているけれども、Webの世界は1記事あたり数百円から数十万円まで。あまりにもピンキリだ。

ここmilieuというメディアを運営している私自身、「Webメディア運営」というテーマでイベントなどに呼ばれると、驚くことに、本当に多くの「どうすれば良いの?!」という悩みを抱えた人が集まる。

 

……ということで!

「Webライターに関わる3人で、マネタイズとメディア作りと人材育成についてのノウハウも悩みも全てぶっちゃけながらそれを記事にしていこう会議」

 

を開催させていただきます(長い)。

参加者は……

スタートアップ業界で彼が記事にしていない会社はないのでは? と思うほどに、日本のスタートアップシーンの成長に貢献してきたであろう、ライターのモリジュンヤ(@JUNYAmori)さん。

テック系メディアで長らくライターをしていた彼は今、inquire Inc.という会社の代表をつとめながら、UNLEASH編集長 、NPO法人soar副代表理事、IDENTITY共同代表などもされていて………………

…いやぁ、ぶっちゃけ「ネットで名前はよく見るのに、一体何をやっているのかよくわからない人」かもしれません。私もよくわかってない。

が、彼の強みはなんといっても、無数の日本のスタートアップ経営者や、海外のユニークで斬新な組織形態を何千件と取材してきた、という知恵。

そのノウハウを、自らの組織やWeb編集業界に余すことなく注ぎ込んでいるところ。

 

彼はモリさんと同じく、IDENTITYの共同代表である碇 和生(いかり かずお @ikalii)さん。

碇さんは、名古屋在住。

多くの方が課題を抱えている「地方の情報発信」について、今まさに成果を出している真っ最中。彼が運営するWebメディア「IDENTITY名古屋」は、名古屋に住む10人に1人がアクセスしているという人気サイト。2015年にスタートし、2017年に入ってからは前年比300〜400%の成長っぷりだそう。

碇さん自身はライターではなく、昔から自分でスタートアップを経営していたことから、マネタイズや情報網の裏側を担っているという「黒幕」タイプ。

ちなみに生まれも育ちも横浜で、実家が名古屋に引っ越したことから、名古屋に縁があるそうなのですが……目下の悩みは「名古屋弁が喋れず、よそ者だと思って警戒されがち」なことらしいです。わかる。

 

そして私。ここmilieuの編集長の塩谷舞(@ciotan)です。フリーランス3年目。前職ではWebディレクターをしていました。

SNSで記事がバズりやすいことから「バズライター」「インフルエンサーライター(?)」と呼ばれたりもしておりますが……まぁ呼び名は何でも良いのだけれども、SNSは大好きだし研究しまくっています。

でも「バズ」って継続性が低いし、個人依存しやすいもの。それに、私は組織を組み立てるのが超苦手。

 


” 急いで行きたいなら、一人でいけ。遠くへ行きたいなら、一緒にいけ “

そんなアフリカの諺がありますが、私は前者だし、彼らはおそらく後者。

「組織づくりに詳しいライター」「名古屋で暗躍中の経営者」「SNS大好きフリーランス」…という三者三様のポジショントークを全開にしながら、「ぶっちゃけ会議」を始めていきたいと思います。

※なお、この記事はinquire・IDENTITYの提供でお届けしております。読者の中に、記事広告を執筆されるライターの方がおられましたら「あ、広告としてのコンバージョンはこのあたりに設計されてるのかな?」「記事広告なのに、相手のこと攻めすぎでは?」という深読みをしていただければ、より味わい深くなるかもしれません!

 

ライターは労働集約型。そこをどう変えていくのか?

 

塩谷:ジュンヤさんはもう、いわゆる”ライター”としての仕事はほとんどしてないですよね? 数年前までは、どのスタートアップの記事を読んでも、あれもこれもジュンヤさんが書いてる! ……ってイメージだったのですが。

モリ:そうだね。まだ一部では続けているけど……数年前と比べると本当に減らしてます。そもそもライターって、労働集約型じゃないですか。

塩谷:ですね。普通に受託のWebライターとして稼ぐんだったら、ニュース記事が3〜5,000円、インタビュー記事が1〜2万円くらいが相場なのかな。それで毎月30万くらい稼ぐんだったら、とにかく数をこなす!…ってプレイスタイルになりますね。

他のクリエイター職だと、作家の印税とか、作曲家の著作権使用料みたいに、「老後に向けて蓄積する不労所得」みたいなものもあるけど、Webライターの場合、それもほぼないですよね。アフィリエイトとかはあっても……。

モリ:そう、普通にやってると、蓄積もされない。だから数をこなしてきたんだけど、体力はもちろん下降していくから。20年後、30年後……このままやっててもダメだなという危機感が、そもそもありまして。

塩谷:私も独立した3年前は1本1万円くらいで書いてたんですが、当時は記憶がないほど忙しかったし、実際何回も倒れた……。

それで消耗しちゃったから私は「本数」じゃなくて「SNSで拡散されるだけの質まで上げる」ことに重きを置いたら、単価が上がっていって、今では記事広告だと、1記事40万円くらいはコンスタントにいただけるようになって、個人的にはゆとりが出来たのですが。

でも、ジュンヤさんの場合はまた違いますよね。

モリ:そうだね。仕事が自分のところに集中してしまっていたから、まずはライターの組織化が必要だな、と。

塩谷:でも、ライター同士で組織を作っても、さっき言ったライターの労働集約型なビジネスモデルが突然変わる……ということもないじゃないですか。

モリ:そう。ライターのビジネスモデル貧弱問題は、結構深刻だと思ってるんです。

モリ:以前、飲食店のスタートアップを取材した時に話をしていたのですが。飲食店では2時間くらいお客さんが店内にいるのに、お店から出るレジの前でしか課金ポイントがない。それってビジネスモデルとしてすごく古いと思うんですよね、と。

ライターも実は一緒で、色んなところに価値が発生してるのに、「クライアントに記事を納品」という段階でしかお金が発生しない。

塩谷:あぁ……それは本当にそうですよね。フリーライターとして仕事をしていると、専門分野のリサーチも、SNSでの拡散も、時にはクライアントのWebサイトのデバックまでして、工数はものすごくかかっているのに、「記事を書く」以外の部分は金銭的に評価されにくいな、と思ってました。

モリ:僕はライターの育成側に力を入れているのですが、それは後で話すとして。ライターを組織化したときのキャッシュポイントをどう作るか? というのは、彼が得意なので……

塩谷:誰が?

碇:僕ですね……。

塩谷:あっ。碇さん。

碇:ジュンヤと一緒に、2015年に小さくIDENTITY名古屋ってローカルメディアをスタートして、2016年に法人化しました。今はメディア単体でも黒字は出せるようになってきて、来季は数百万、数千万の見積もりでの記事広告も相談してもらうようになって……。

塩谷:ちょっと待って。記事広告だけで数千万?! そんな高い記事広告、聞いたことないですよ。

碇:記事広告+αで、PRも引き受けている場合もあるし、ほとんどが長期の案件なんですよ。そもそもIDENTITYでは、「予算が500万あるから、これで広告を運営してください」っていう単発仕事はほとんどなくて。

塩谷:ふむ。

碇:クライアントと経営目標を共有して、通年のマーケティングを提案しながら、長期で関わっていく案件が多いですね。マーケティング予算を通年でいただいている中で、記事制作にもお金を使っている。

塩谷:あぁ、そういうことですか。上流からしっかり関わってるんですね。

いやぁしかし、ここ数年で、経営目標からしっかり関わっていく制作会社やクリエイターがどんどん増えてきましたよね。日本のスタートアップ市場が盛り上がってる……というのもあるし、UXの概念が浸透して、デザインを磨くことが売り上げに直結している、という事実もありますし。クリエイティブやWebが「お飾り」じゃなくなってきてるなぁ、と。

博報堂出身で、NEWPEACE代表の高木新平(30)なんかは、企業のブランディングや、小泉進次郎さんたちの政治家たちのコンセプトメイキングから関わっているし、

PolcaのCIデザインとかを手がけてるオオタタカヤ君(28)も、経営者から指名を受けてかなり上位概念から関わっているし……。

塩谷:これまで、佐藤可士和さんのようなスーパースターだけが大物経営者と対等にやりあえる……というイメージだったけど、今は若手のクリエイターもどんどん経営者とダッグを組んでる。

私もお菓子屋さんのBAKEのオウンドメディアの編集長として、3年前からBAKEのストーリーを伝え続けてますが。やっぱり会社の一員として事業を発信し続けていると、短期的な「お飾り」としての広告ではなく、本質的なブランディングを考えられるようになったな、って思っています。スタートアップの初期から編集者が関わるというのも、事例として増えてきそうですよね。

日本のインターネットビジネスのほとんどが、東京の人のためのもの

碇:東京では、そうだよね。ただ名古屋だと、東京では主流になりつつあるような「UIを改善していきましょう」という提案ですら、まだまだ出来ていなかったりするのが現状で。

塩谷:うーん、確かに。インターネットって平等なのに、実は地域によってすごく情報格差があるよなぁ……。私は23歳まで大阪でしたけど、やっぱり大阪にいると、あんまり東京のリアルな状況って見えてこなかった。

碇:基本的に日本でのインターネットビジネスって、ほとんどが東京のものじゃないですか。東京の人たちが、東京のために作っているプロダクトばかりで。一部、キャズムを超えた瞬間に地方の人が使い始める。たとえばメルカリとか。

塩谷:メルカリの使いやすさは異常ですからね……。でも、メルカリほど浸透してなくっても、誰でも使える便利なサービスが沢山あるのに、知らないのはもったいないですよね。

何か事業を立ち上げるにしても、Webサイトを作るならSquarespaceでサクっと作れるし、STORES.jpとかを使えばオンラインショップも作れるし、CoinyとかSquareで誰でもカード決済が出来るし。イベントの事前決済もPeatixとかPaymo使ったら便利だし、友人同士の割り勘もLINE Pay使ったら楽……というのが、場所によってはほとんど知られてなかったりする訳じゃないですか。東京スタートアップ界隈だけじゃなくて、もっとこういう便利なサービスを各地に広めたい……。


碇:そうなんだよね。ただやっぱり、東京でスタートアップ界隈の知人が多いと、情報が入ってくるスピードが速いから。

IDENTITYは、「あらゆる地域にデジタルシフトを起こそう」ということをテーマにしているんだけど。僕自身は東京にあるこのオフィスと名古屋を行き来してるから、常に情報はキャッチアップしやすい状況ではあるし、その知見を生かしてまずは名古屋の大企業からスタートアップまでをバックアップしていく、という仕事をしていて……

塩谷:おお……つまり、高知にイケダハヤトあり、福岡にカズワタベあり、愛知にイカリカズオ……名前、カタカナにします?

碇:いや、しません。そこは岐阜出身のモリジュンヤに東海地方のアイドルとして頑張ってもらいたい。

それはさておき、やっぱり地方だと、東京の正攻法では上手くいかないことも多くて。名古屋はメーカーの街だから、制作会社に何か仕事を発注するときも、最初は「工場に決まった部品を発注する」と同じ支払い方法なんですね。そうすると、良いネジが出来ても値段が上がるわけじゃないし……

塩谷:ふむ。でも世の中では今、「これからは貨幣経済社会から、評価経済社会に移行する!」って声もありますよね。

碇:そう、評価経済。ただ地方は、まだまだ貨幣経済が中心ですね。

でも、しっかり論理的に説明して、数字としての結果も出していれば、ちゃんと理解してくれるクライアントは多いです。地方で必要なのは、「共通言語がない」ことを理解した上でのコミュニケーションだなぁ、と日々思っていて。

塩谷:というと?

碇:僕らはITツールやインターネットのことに詳しいけど、銅やニッケルの輸入価格はわからない。だから「なんでわからないんだ?」って思うんじゃなくて、コミュニケーションを丁寧にとりながら、歩み寄っていけば、しっかり評価してもらえるんですよね。

塩谷:あぁ……なるほど。私、気が短いので、「わかる人にだけ、わかってもらえれば良い」ってスタンスになりがちなんですよね……。

碇:今はまだまだ地方分離感はあるけど、それこそ地方に住んでいても、SNSで尖った人をフォローしていると情報が入ってくるし、色んな人が各地で「自分もここで何か出来るかも」と思い始めてる。だからこれから、地域はもっと面白いメディアになるな、と思っていて。

塩谷:確かに。現に、Instagramのライフスタイル系インフルエンサーだと、地方在住の方も多いですしね。ただそういう方だと、影響力はすごくあるのに、広告業界の単価を知らなさすぎて「安く買い叩かれる」ということも多いなぁと思っていて。

碇:ちゃんとビジネスの仕組みを理解して、自分の価値を理解しないとね。ただやっぱり、地方だと、東京とは予算が1ケタ違うこともザラなんですよね。

仕事の流れで言うと、本社が東京のクライアント→東京の大手広告代理店→大手広告代理店の名古屋支店→地元の制作会社→…で、最終的にフリーランスの人がアサインされる。

塩谷:あぁ…そういう孫請け、ひ孫受けの仕事を何回かやったことあるのですが、なかなかの奴隷作業になりますよね……。クライアントの顔も見れないし、単価も下がるし、徹夜必須だし、クリエイティブな提案をしたとしても絶対に採用されないし……。

碇:IDENTITYの場合は、クライアントからの直案件がかなり多いんですね。そうすると、うちからフリーランスの人に支払う時には「これで半年は食っていける!」というような規模感になっていたりして。

塩谷:それは夢がありますね。しっかり自社の強みを情報発信しておけば、情報感度の高いクライアントは案外見つけてくれますしね。

社員を会社に閉じ込める時代ではない

塩谷:ただ、会社によっては、SNSを使っちゃダメだとか、エンジニアだけどGithub公開しちゃうと、ヘッドハンティングされるからやめろ…と言われてるとか。そういう組織もあるじゃないですか。SNSで情報発信したいのにできない、って人も多いと思います。

モリ:禁止にして閉じ込める時代じゃないし、それは本質的じゃないよね。

モリ:たとえば、自分の経営してるA社と、競合のB社、そしてフリーランス。フラットにそういう3つの選択肢があったとしても「それでもA社が良い」って選んでもらうためには、どういう組織にしていかなきゃいけないのか? そういう考え方でいいはず。

塩谷:あぁ、そうですね。会社が社員を出て行かないように縛るんじゃなくて。

モリ:別に転職して外に行っても、関係性がなくなる訳じゃない。良い人材と、良い関係性を続けていくためには、どうしたらいいかっていうことだよね。Linkedin創業者のリード・ホフマンが『ALLIANCE』っていう本を出しているけど。

塩谷:終身雇用じゃなくて、アライアンス(同盟)っていう、緩やかな組織体系ですね。ジュンヤさんはinquireって編集プロダクションを作ってますが、そこもアライアンス的な組織形態なんですかね。正社員はいない?

モリ:そうだね。正社員はいなくて、フリーランスの人たちが所属してる。「この人は、ウチの仕事がなくなると路頭に迷う」という状況じゃなくて「明日ウチが潰れても生きていけるよね」という感じ。

塩谷:自立した人たちの集合体……それは理想的だなぁと思いいつつ、「社員を食わせるためには、この仕事を受けなきゃ仕方ないんだよ!」って会社も多いと思います。稼いで、社員をしっかり食わせていくための仕事と、会社のブランディングになる花形の仕事を分けてる会社も多いですし。

モリ:でも、やりたくない仕事は、やりたくないでしょ? 僕だって、みんなだってそうじゃん。やりたくない仕事やってる程人生長くないじゃないですか。

だから組織を安定させておかなきゃいけない。僕らにとっての「安定」は、「会社がなくてもやっていけるくらい、スタッフ一人ひとりが自立してる」ってことなんですよね。

塩谷:それは「安定」のイメージがずいぶん変わるなぁ……。でも、変化に柔軟であることが今の時代の「安定」かもしれないですもんね。

とはいえ、スタッフの自立を求めるにしても、経験の浅いスタッフには、教育も必要じゃないですか。

モリ:僕らはUNLEASHって自社メディアを運営してるんだけど、入ったばかりの人はまず、ここで取材やイベントレポートを書いてもらったりしていて。

これは編集プロダクション・ノオトの代表である宮脇さんから学んだことなんだけど、ノオトに入社した人はまず、品川経済新聞の取材・執筆の経験をさせてるんだよね。そういった自社メディアがあるのはすごく良いな……と思っていて。

塩谷:良いですね。自社メディアだときっちり数字も見られるし。「Google Analyticsを見たことがない!」というライターさんも多いですが、自社メディアで記事を書いて、数字を見て……という癖がつくと、クライアントワークでもちゃんと活かせそう。

モリ:自社メディアがあると、仕事もすごく進めやすくなるよね。何か面白そうなことがあった時に「それ取材してもいいですか?」と依頼しやすいし。「記事書いてくれてありがとう」と言われたり、それが別のクライアントワークに繋がったりもする。

塩谷:オウンドメディアは、社交ツールとしても有効ですよね。ブログだと取材しにくいけど、メディアだと取材させてもらいやすい。milieuでもアーティストに取材させてもらったりしますが、もし「しおたんブログ」だったら、ちょっと出るのも敬遠されると思います……。

ただ、ジュンヤさんみたいにSNSでもフォロワーがいて、数字を担保できる人が運営していたら良いのですが、全然数字が伸びないオウンドメディアが「取材させてください!」って色んなところに押しかけるのも、ちょっと迷惑だなぁと思っていて。

だからオウンドメディアが普及しまくると、被害者も増えてしまうなぁ、というジレンマはありますね。

ライター志望なのに、志望動機の日本語が支離滅裂?

 

碇:参入ハードルが低いからね。「ライターになりたいです」という人なのに、志望動機の日本語が支離滅裂……ということもよくある。

塩谷:そうですねぇ。ただ、目指す人が多いこと自体は、業界全体には良いことだなぁと思っているんですが。日本のフィギュアスケート界がこれだけトップオブトップを取れたのも、層が厚いからだし……。

碇:あぁ、それはそうだね。

塩谷:「フィギュアスケーターになりたい!」って人が大勢いるからこそ、そのピラミッドの頂点に羽生君がいるわけで。「業界のレベルが低い!」って嘆くよりも、技術を磨いてトップを目指したら、そこに憧れている人たちは追いかけるし、自ずと全体もレベルアップする訳で。参入ハードルが低くて層が厚いのは、良いことだとは思うんですね。

モリ:でも、まずは業界自体が抱える問題をクリアにしていかないと。裾野が広がっても、天井はそんなに高くないから、すぐ生き詰まっちゃうんじゃないのかな。

塩谷:……確かに。羽生君ほど稼げる人はいないからな……。いや、ちょっと羽生様と比べるのはあまりにもおかしいですが……。

モリ:編プロでも、売り上げていても年商は1億くらいだし、トップライターでも2,000〜3,000万円くらい。しかもピラミッドが正しい三角形になっている訳でもなくて、一部トップライターの人が離れ位置にいて、その中間が抜けて、下に台形が出来ている、という感じが現状かなぁ、と。

塩谷:そうですねぇ。ただ、ライターって「儲けたい」って気持ちが強い人は少ない気がするんですよね。だから2,000〜3,000万も稼げたら大満足、という感じはある気がします。

モリ:でも、他の職業と比べるとまだまだ。みんなが入ってきたくなってるのは良いことだと思うんですけど、そんなに未来が明るい業界じゃないんじゃない? ってちょっと思う。

碇:スタートアップ経営者は、数年前に「二束三文だよ〜」って言ってたと思えば、今は数億円規模に成長してたりもするからね。

塩谷:そこは、スタートアップ業界の経済状況をよく見てるお二人だからこその視点ですね。文章を書くのが好き! ってモチベーションで始めたら、あんまりそこまで考えられない気がする。

碇:フリーランスで成功した時に2〜3,000万の年商を得ても「自分が豊かになる」という経済圏に収まってしまう人は、個人的にはあまり興味がなくて。

別にそれはそれで良いんだけど、その数千万を、どう投資に回していけるか。もちろんビットコインとかそういうものではなく、事業や人材へ投資して、さらに利益を上げて投資に回していく……というフリーランス像が増えてもいいな、と思ってるんだよね。

 

塩谷:いやぁしかし、受託仕事の波の中にいると、そこと並行して自ら事業を立ち上げるって体力いりますけどね。現状の仕事をストップさせなきゃいけないから、クライアントには一旦迷惑かけちゃいますし……。

でも私もmilieu立ち上げてからは本当に良い仕事が舞い込んでくるようになったから、貯金切り崩して作って良かったなぁとは思いますね。ここはまだ小さな投資ですが……!

メディア単体でマネタイズするのではなく、メディアの専門領域を生かした別の仕事を

塩谷:ジュンヤさんは、受託仕事ではなく、NPO法人soarの理事もしてますよね。

soarって、本当に丁寧に記事を作っているし、多くの社会的マイノリティである方々の心の支えになってる。素晴らしい取り組みだなぁと思っていて。

塩谷:でも、記事広告もないし、バナーもないし、お金儲けの香りが一切しないのですが……あそこは、一体どのように運営されてるんでしょう? 募金?

モリ:うん。寄付金を中心に運営していて、広告はやらないメディアにしてるんです。

塩谷:ですよね。でもそれだと、継続性は弱くなりませんか?

モリ:実は、soarの記事を作っている人たちは、別の場所でもその専門知識を生かした仕事をしていて。行政が推進する障がい者スポーツの推進プロジェクトで記事を書いていたり……

塩谷:そうなんですか!あぁ、それはすごくハマりますね。soarの扱っている領域って、知見がない人が土足で入ってしまうと、ふいに読者を傷つけてしまうこともあるし……。

そこを普通の編集プロダクションに依頼するのはリスキーだと思うけど、soarのメンバーなら安心して任せられる気がします。

広告代理店なんかが入ってメディアを立ち上げる時って、どうしてもそのメディア1本でマネタイズしようと躍起になってしまったりするけど。でも実はメディアはしっかり意見を主張する場としてピュアに運営して、そこが広告塔になって他の仕事が入ってくる……というのは、すごく良い循環ですよね。

モリ:今はsoarに、IDENTITY側のWebマーケターが関わって、SEOやCRMなんかの部分をバックアップしている。裏側を整備すると、より読者が来てくれやすくなって、メディアとしても伸ばしていけるしね。

塩谷:へぇ。社会貢献系のメディアって、志が素晴らしくても、Webサイトとしての構造が甘すぎたり、マネタイズ出来ずに潰れてしまうところは多いなぁと思うのですが……その座組は心強いですね。

「個人の志」で運営しているメディアの弱点

塩谷:美容やダイエットなんかのマネタイズしやすい分野では、信じられないくらい膨大な知見をもとに、SEOもUXも日々施策が進んでいる一方で、「個人の志」で運営しがちな領域のメディアは、理念は素晴らしくとも、どうしても裏側が弱くなるじゃないですか。

アートや演劇なんかの芸術関係や、地域の情報発信サイトなんかも、サイトの不具合が多すぎて機会損失しまくっている……。

碇:そうですね、まさにセンスが良いローカルメディアなんかは、数字を見てみると全然誰も読んでなかったりするんですよ。すごく気合を入れて作ってるのに。

塩谷:あれ、超もったいないな〜〜〜と思うんです。ページのローディングがやたらと重かったり、未だにスマホ対応してなかったり……。PCのみ対応って、昭和かよ!と。

碇:おそらく、雑誌メディア出身の人が雑誌のルールのまま作っているものが多くて、だからこそ1つ1つのコンテンツはすごく丁寧。でも、SEOが考えられていないし、そもそも読者像が掴めていなかったり……。

塩谷:本当にもったいない。写真はオシャレ、テキストも上手、デザインだって素敵。でも一向に読者が増えないというのは悲しすぎる……。

行政の税金がそういうところに注ぎ込まれていたりするのを見ると、本当にもったいない!!!! って思います。ローンチしただけでお祝いしたりするけど……そうじゃなくて、コツコツ記事を出して、SNSの反響や数字を見ながら改善して、成果が出てからお祝いすべきところを。ローンチパーティーの予算すらもったいないです(怒)。

碇:逆に地方を拠点にしたメディアで数字がとれているものは、アフィリエイトやアドワーズを収益源にしたブログメディアが多いんだよね。

ただ、広告代理店や企業からは、やっぱりアフィリエイト系のブログには記事広告を依頼しにくいわけで。

塩谷:確かに二極化してますよね。めっちゃオシャレなサイトか、バナーだらけのサイトか……。

モリ:そう、その中間がないんですよ。僕自身、名古屋に行ってもWebで参考になる情報がなかなか見つからないことが多くて。グルメやレジャースポットの”レビュー系”サービスがあんまり伸びてない……ということで、名古屋のグルメやレジャー情報を取り扱うIDENTITY名古屋を立ち上げよう、と。

塩谷:Webメディアが乱立して、もうこれ以上新規参入の隙間なんてなさそうに思いますが……ローカルメディアをちゃんと運営していく、というのは、希望のある話ですね。一筋縄ではいかないと思いますが。

あとはやっぱり、ローカルコミュニティに欠かせないのは「志の近い仲間」との出会いですよね。私が東京や大阪でWebメディア関係のセミナーをすると、熊本や青森から、大学生や高校生がわざわざ来てくれたりして……。

そういう子達って「地元だと、こういう話が出来る友人がいなくて!」って、すごくエネルギーが溜まってるんですよね。東京だと、スタートアップで働く高校生なんかも、珍しくないじゃないですか。

ただ各都道府県には、まだまだ「切磋琢磨しあえる相手が欲しい」という若者が潜伏しているはず……。あ、こんど我々、名古屋でイベントやるじゃないですか。あれ、高校生は無料にしません?

碇:いいっすよ!

塩谷:高校生同士が繋がれば、10年モノの友人が見つかるかもしれないし。あ、中学生でもアリですね。

碇:確かに、それはいいね。そうしましょう。

 

……ということで、「Webライターに関わる3人で、マネタイズとメディア作りと人材育成についてのノウハウも悩みも全てぶっちゃけながらそれを記事にしていこう会議」は、ひとまずここで終了。

ただこの続きの、もっと具体的なノウハウの共有は、IDENTITYとmilieuの共同イベントでお話します!

私からはWebメディアやSNS運営のノウハウをお伝えできる限りお伝えします。碇さんたちIDENTITY名古屋の方々からは、ローカルメディアの運営について。ネットには書けないことも喋っていただきましょう!

<Webライターに関わる3人で、マネタイズとメディア作りと人材育成についてのノウハウも悩みも全てぶっちゃける会議>

・日時
2018年4月8日(日)
14:00 開場 14:30 開始(17:00終了予定)

・第1部
記憶に残る記事の作り方・効果的なSNSの使い方(塩谷舞)

・第2部
「Webライターに関わる3人で、マネタイズとメディア作りと人材育成についてのノウハウも悩みも全てぶっちゃける会議」(モリジュンヤ・碇和生・塩谷舞)

・場所
名古屋テレビ塔 3F
「栄駅」から徒歩 約3分「久屋大通駅」から徒歩 約1分

・参加費
2,000円(高校生以下は無料)

・定員
100人(うち無料枠は10人)

・イベント参加対象者
Webライターやメディア運営に関わっている方、これから目指している方など

チケットお申し込みはこちらから!

こちら、18歳(高校生)以下であれば入場無料です。もちろん大人の方も大歓迎。

 

「相場はいくらなの?」
「どこにお願いすればWebでしっかり成果が出るの?」
「どうやって価値を高めればいいの?」
「新規参入が多い中で、質はどうやって高めていくの?」
「新規の案件を得るには、やっぱり東京に行かなきゃいけないの?」

そんな疑問をリアルに共有しながら、悩みを解決しつつ、仲間を見つける場にもなれば嬉しいです。


また、二人が経営するinquire・IDENTITYでは現在、絶賛人材募集中とのこと。

” 急いで行きたいなら、一人でいけ。遠くへ行きたいなら、一緒にいけ “

彼らと一緒に、遠い世界へ行きたい人は、ぜひ。コンタクトしてみてください!

名古屋だけではなく、関東も関西も!
ライターだけではなく、プロジェクトマネージャーやコーディネーター、編集者も募集中とのこと!

そして……こちら!

彼らは、愛知のお隣、岐阜県・美濃加茂市にビル一棟まるごと使って、あらたなコミュニティビルを立ち上げるためのクラウドファンディングをスタートしました。

なんでも、ブラジル人人口が多いという美濃加茂市。国籍も年齢もバラバラの「コミュニティビル」は、価値観もバックグラウンドも違った方々が集まりそう。

3,000円から支援できる(しかも10杯分のドリンクチケットリターン付き)ですので、岐阜に縁もゆかりもない方でも、「ちょっと縁を作ってみるか」という感じでこちらから支援してみるのはいかがでしょうか?

楽しい旅先の飲み仲間が増えるかもしれません!


この記事の裏話を、こちらの音声コンテンツで配信しています。よければどうぞ!

Text by 塩谷舞(@ciotan
Photo by なかむらしんたろう(@nakamuran0901
[PR]  提供:inquireIDENTITY

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