メディアのルールは変わった。今のプライドを捨てる勇気はあるか?

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Text by 最所あさみ(@qzqrnln

「ホリエモンさん、家入一真さんと対談してみたいです!」

23歳の女の子の無邪気な一言から1ヶ月。

いつか、という「夢」は、11月21日という「予定」に変わった。

そのきっかけとなった23歳の女の子とは、今をときめく “ゆうこす”こと菅本裕子。『SNSで夢を叶える』という書籍を出版したばかりの彼女は、瞬く間に多くのフォロワーを魅了しながら、まさにSNSを駆使して夢を叶えている真っ最中だ。その圧倒的な個性を前に、「元・HKT48」という冠は、いつしか薄くなっていた。

 

本番前、緊張しながらLINE LIVEで現場の様子を伝えるゆうこす。寒い中1時間近く笑顔でライブ配信し続ける彼女の姿は、まさにプロ。その画面の先には1万人を超えるファンが、リアルタイムで視聴している

はじまりは、ここmilieuに掲載された一本のインタビュー記事だった。

「女子高生も、芸能人も、起業家も、みんなが彼女の噂をする。菅本裕子 23歳」

このインタビュー記事の中で、編集長の塩谷が投げかけた「これから対談したい人は?」という問いに、彼女は間髪いれずにこう答えた。

「家入一真さん! ……ホリエモンさんともお話ししてみたいです!」

それは、彼女の中で眠っていた「夢」だったが、記事の公開直後に「予定」となる。しかもTwitterを通しての快諾だった。

口に出せば夢は叶う、なんてよく言うけれど、口に出したそばからこんなに早く夢を叶えてしまう人は、そういないだろう。

こうして、3人の鼎談が実現した。

SNS時代のコンテンツに「予定調和」はいらない。
これからウケるのは「リアル」と「カオス」

たくさんの人の期待をのせてはじまった放送は、冒頭から「カオス」そのものだった。

機材トラブルにより予定時刻を過ぎても放送が開始できず、現場は緊張と焦りに満ちていた。

「じゃあ、とりあえずゆうこがLINE LIVEしましょうか!」

ゆうこすの提案により、堀江さんはFacebook LIVE、家入さんはTwitter LIVEと三者三様のかたちでライブ配信がはじまった。

機材トラブル中、それぞれのSNSでライブ配信する3人

ゆうこすのLINE LIVEには1万人近くの視聴者が集まってくるのだが、その多くが女子中高生。対して、堀江さんのFacebook LIVEには為末大さんや「クラシル」を運営するdelyの堀江裕介社長など、著名人や起業家が次々に訪れた。それを横目に、家入さんは「僕のは…きっと自宅警備系の方が見てますね…」とボソリとつぶやいた。

3人それぞれが、自らのデバイスで配信をする。
もしこれが従来のテレビ収録だったとしたら、考えられない光景ではないだろうか。

このリアルタイムな対応力に、3人の強さを改めて感じた瞬間だった。

さらに、堀江さんは自らのFacebook LIVEを見ていたクラシルの堀江裕介社長もその場に呼んでしまった。(以後、ややこしいので堀江貴文さんをホリエモン、と書かせていただく)

多動力とスピード感のかたまりのような4人が揃ったところで、機材トラブルが解消し、満を持して本番の放送がはじまった。

今回は「ゆうこすと一杯」という、ゆうこすが日常的にLINE LIVEで放送している企画のスペシャル版として、お酒を飲みながら1時間半語り尽くしてもらった。

内容自体はこちらのアーカイブでご覧いただけるのだが、この記事ではあらためて、「リアル」と「カオス」のかたまりだったあの時間を振り返りながら、その可能性を考えていきたい。

「みんな結局、いくら稼いでるの?」

まず、「お金の稼ぎ方」というテーマに対してホリエモンがぶっこんできた

「で、みんな結局いくら稼いでんの?」

…という質問。

お金の話がタブー視されがちな日本において、年収の話を赤裸々に語る4人の光景は、YouTubeのコメント欄やTwitterで大きな話題となった。

クラシルの堀江社長の「CMをたくさん打ってるから、稼いでると思われがちなんですけど、僕自身の役員報酬はかなり低く設定してます!」という発言を受けて、家入さんは「ベンチャー社長って意外とそういうもんですよね…」と言いつつ、自身の月収を明かしていた。

そして、ゆうこすの「そろそろ会社の年商が1億円になります」という発言。さらに、恋愛について問われた後に「実は、元カレを今自分の会社で雇ってるんです…!」と明かした彼女の姿に、ネット上は一斉に「ゆうこす、漢らしすぎる…」「ゆうこすに雇われたい!」と湧いた。

「俺もそんな時代に生まれたかったよ!」と感心するホリエモンを前に、ゆうこすは続けてこう語った。

「彼は夢破れた人なんですけど、私のスケジュールとかを管理する能力はすごく高いんです。だから、彼の適材適所はここだ!って思って、今うちの事務所で働いてもらってるんです」

放送前、こんなぶっちゃけトークが展開されるとは誰が想像しただろうか。会場にはゆうこすのマネージャー(元彼ではない)も同席していたが、彼女の発言を止めることもなく見守っていた。

SNS上の視聴者も同じく、この隙だらけのコンテンツをハラハラと見守り、時につっこみをいれ、リアルタイムにたくさんの人と空気感を共有しながら視聴する。

もちろん、勉強会やセミナーのようなキッチリとした番組を期待していた視聴者からすれば、見づらい点は多々あったし、次回に向けての改善点も私自身たくさん感じた。

しかし、同時にこのカオスが生まれる「リアル感」こそが、これからのコンテンツに求められるものだということを感じた放送でもあった。

さらに放送中にホリエモン・家入さんが『SNSで夢を叶える』というゆうこすの著書を前に、「この本はタイトルが悪いよ!」とつっこみ、ゆうこすが「KADOKAWAの担当さんも見てるんですけど……!」と慌てる一幕も。タイムラインでは「ゆうこすがんばれ」「ホリエモンに負けるな!」というエールが飛んだ。

 

SNSには、光もあれば、影もある

配信中、印象的だったゆうこすの言葉がある。

「私たちの世代は、上の世代から生きづらいよねって言われるんですけど、SHOWROOMとかTwitterとか、挫折を”いい経験”に変える手段がたくさんあるから、全然生きづらくない!むしろ生きやすい時代だと思います。」

今回のゲストは3人とも、世間から一度は「終わったな」と言われるようなどん底を経験している。

また、大きな失敗や炎上だけではなく、SNSを使っていれば日々小さなことで叩かれることも多い。

SNSへの思いを語るとき、そこには光もあれば影もあるのだ。


家入さん「みんなホリエモンは傷つかないって思ってるけどそんなことない。傷ついてるけど、かさぶたがミルフィーユのようになっているだけ。」

 


ホリエモン「“有名税”なんてない。あれは週刊誌がポジショントークのために作った言葉だ。有名人に対してなら何を言ってもいい、というのはおかしい

 

ゆうこす「ネットではあることないこと書かれるし、SHOWROOMやLINE LIVEをはじめた頃は、同業の人たちから “堕ちたな”と言われたんです」

 

多くの人の目に触れるSNSでは、影響力を持てば持つほど心無いバッシングも起きる。

しかし、批判を恐れずに本音で思いを発信することで、そこに共感した人が集まり、夢を実現するきっかけになるのもまたSNSなのだ。

そして夢を実現していくために、フォロワー数という「発信力」だけではなく、現実世界での強い仲間がいる、という点も3人の共通点だ。

失敗しても炎上しても、根本的に信用してくれる人がいれば、必ずまた立ち上がれる。

 

これからの時代に捨てるべきもの。それは既存のレールにしがみつこうとしてしまう「プライド」だ

配信中、ホリエモンがしきりに「プライドを捨てろ」という話をしていた。

ゆうこすのように、一度タレントとしての王道ルートを歩んだ人たちは、プライドが高すぎるがゆえに、突き抜けきれずにくすぶってしまうのだと。

プライドの高さが次の挑戦を邪魔するのは、きっと芸能界に限ったことではない。大企業から年収の低いスタートアップに転職することや、言葉がうまく通じない外国でビジネスをすることなんかも、きっと同じだ。

なぜ私たちは、一度プライドを身につけてしまうと、それを捨てられないのだろう。

それはつまり、「こうあらねばならない」という既存の枠だけで考えているからなのではないだろうか。

タレントである以上、テレビにでなければならない。
本を出したかったら、出版社から声がかかるのを待たなければならない。

そういった従来の価値観がベースにあると、どうしても新しいメディアに対して「私はそんなに安くない」と頑なになってしまう。

マスメディアの方が価値が高く、インターネットメディアに出るのは “堕ちた”証拠。

いまだにそう思っている人たちは多い。でも、ここからはゲームチェンジの時代だ。


また、ホリエモンはゆうこすにこうアドバイスをした。

「ゆうこすはこれから、フォロワーを100人増やせ。フォロワーって、SNSのフォロワーじゃないぞ。ゆうこすのやり方を真似して、成功していく人。そんな人を100人作れ。

ゆうこすには今、Twitter20万人、Instagram28万人、YouTube26万人……という数のフォロワーがいて、その数は現在進行形で増え続けている。SNSを駆使したセルフブランディングを成し遂げて、どん底から這い上がってきた彼女はいまや「SNSで夢を叶えた女の子」だと言えるだろう。

ただ、大切なのは、彼女ひとりが成功するのではなく、その道を歩む人が増えること。そうすれば、ゲームのルールが変わった、ということが証明されるのだ。

 

「次にこの人は何をやってくれるのか」という期待が、これからのスターを作る

ものすごいスピードでスターダムを駆け上がっていく「ゆうこす」を、最近ブームになった一過性のタレントだと見る向きもあるだろう。

実際、これまでもブームとして消費されてあっというまに見なくなってしまったタレントの数は枚挙にいとまがない。

しかし、今回の放送を見て、なぜ彼女がこれだけ多くの人に支持されるのか、私自身、実によくわかったのだ。

「消費される人」と「活躍し続ける人」。

その違いは、今の資産を切り売りする人と、常に変化を見せてくれる人ではないだろうか。


彼女は、完全に後者なのだ。だから人は、「次は一体、何をやってくれるんだろう」という期待を持って、その行動を追ってしまう。

今回の配信中にも、「秋元康さんといつかお会いできたら」というゆうこすの発言を受けて、堀江さんがその場で秋元さんに連絡してくれるという一幕があった。

もし、彼女が秋元康さんと本当に会うことが出来たら、私はきっと自分のことのように喜んでしまうだろう。その共感性の強さこそが、菅本裕子の魅力だ。

余談ではあるが、この放送から数日後、彼女は幻冬舎の代表である見城徹さんとも面会していた。

この面会は、Timebankというその人の時間を売買できるサービスを通して、ゆうこすが見城さんの時間を買うことで実現したもの。

Timebankではその人の影響力に応じて価格が変動し、伝説の編集者である見城さんの時間を買うには決して安くはないお金を払う必要がある。

しかし、ゆうこすは「買うという判断は即決でした!」とキラキラの笑顔で答えてくれた。

一方で、ホリエモン、家入さん、見城さん……というスーパースターたちと向かい合うことになるこの数日間、彼女は経験したこともない不安に押しつぶされそうになり、ほとんど眠れなかったのだという。

しかし、彼女は勝った。ゆうこすと会った日の夜、見城さんの755には、こんなメッセージが投稿されていたのだ。

本当に無限の可能性を感じる女性でした。やがて、彼女の時代が来るでしょう。真っ直ぐで努力家。繊細だけど胆力もある。頭も良いし、自意識の処理もお見事。激しい葛藤と戦いを通過しなければこんな佇まいにはなりません。お世辞は一切ない。念のため。

——見城徹のトーク(755)より引用

 
 

 

冒険や刺激を積極的に楽しむ人材が、マイノリティであるこの国で

 

2011年から2014年の世界価値観調査(WVS)によれば、「冒険や刺激のある生活は大切だと思う」という質問に対し「とてもよく当てはまる」「当てはまる」と答えた日本人は9.7%と1割にも満たず、アメリカの26.5%という数字に比べて保守的な傾向であることがわかる。

「冒険や刺激を積極的に楽しむ」という人材は、日本においては、マイノリティとも言えるのだ。

これまで終身雇用前提で企業に入り、定年まで勤め上げるのが当たり前とされてきた日本では、「レールを外れる」ということに抵抗感を抱く人が多いのだろう。

もちろん穏やかな毎日を過ごすこと自体は素晴らしいが、そんなマジョリティ側の意見が同調圧力と化して、挑戦したかった人たちの妨げになってしまっていないだろうか。「そんなことして、失敗したらどうするの?」と、足を止められてはいないだろうか。

しかし、今は失敗や挫折を経験しても、そんなマイナスですらプラスに出来るツールが発達した。お金がなければクラウドファンディングで集められるし、マスメディアに取り上げてもらえなくてもSNSを駆使すれば有名になれる。

失敗ですら「いい経験」に変えてしまえるツールは、だれの手の中にもあるのだ。

「今は生きやすい時代です!」というゆうこすの言葉は、挑戦に尻込みしがちな私にも、強いエールとなった。

 

ときどき失敗もするし、ちょっと足りないところもある。

でも、それを隠すために苦しみながら背伸びするより、何もかもさらけ出しながら楽しそうに戦う姿に、人は思わず惹かれてしまう。

プライドを捨てる。かっこつけない。さらけ出す。

そんな無防備さに、これからの時代を生き抜くしなやかな強さ感じた、まるで嵐のような一夜だった。

執筆:最所あさみ(@qzqrnln
編集:塩谷舞(@ciotan
写真:豊島望

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この記事をTwitterでシェアしてくださった方の中から抽選で1名の方に、ゲスト3名の著書をセットでプレゼントします!すべて直筆サイン付きなのですが、家入さんのサインだけなぜか「milieu編集長の似顔絵」を描かれてしまいました……ご理解いただけましたら幸いです。

プレゼントではなく、確実にご購入されたい方はこちらからどうぞ。

 

編集後記。嵐のような夜を終えて(12/14 追記 塩谷舞より)

この記事を公開してすぐ、ゲストライターの最所あさみさんが、この記事の裏側を自身のnoteに書いてくれました

また、最所さん、ゆうこす、わたし塩谷の3人で、後日この嵐の夜を振り返るLINE LIVEを開催。こちらもまたカオスにはなりましたが…アーカイブをはっておきます。

LINE LIVEのアプリが入っていない…という方は、Facebookにもアーカイブがありますので、よければどうぞ。

 

さて。怒涛の「菅本裕子特集」をお届けしたmilieuでしたが、また、少し静かなマイペースに戻ります。

この一連の記事や生配信は、milieu編集長である私の意志で進めさせていただきました。そして、この記事でその特集を終えます。もし彼女が次に登場するときは、彼女が期待を裏切るとてつもない変化をみせたとき、また違った形での紹介になるでしょう。

1つだけお伝えしたいことがあり、このように編集後記を書かせていただきます。

メディアとして「紹介したい人」と、個人的に「仲が良い人」は違います。もちろん、ゆうこすとは、上のライブ配信を見ていただければわかるようにとても馬が合うのですが、だからといって、そんな方ばかりを大きな理由なく何度もここにお招きしていては、それは私の思う「オピニオンメディア」ではなくなってしまいます。

milieuは、クリエイティブシーンを伝えるオピニオンメディアとして、流行の先端で光が当たる世界も、その裏側も、そして深海のような世界にも入っていき、ことばや写真を通してその価値を伝え、考察し、未来に残していきたい、と考えています。

また、対象者のことばをそのまま届けたり、手放しに絶賛するようなものであったりしてはならない、とも考えています。そこには時に対象者との「距離感」が必要であり、仲の良さというのは邪魔にもなります。

私にとって「菅本裕子」は、メディアを始めたばかりの自分の前に突然あらわれた、女神のような存在です。彼女の言葉には希望があり、強さがあり、それを記事にすることほど楽しいことはありません。彼女ほど貴重な存在は、他にはそうそういません。

だからこそ、馴れ合いで接さないこと。取材対象者とも、社会とも、しかるべき距離感で向き合っていきたい、と思っています。

 

さて、菅本裕子特集の次は、パリのジュエリー職人さんのお話です。一見、この並びは、統一感がないように思われるかもしれません。ですが、共通しているのは「恐れずに、時代や文化を創ってる」という点です。

さまざまな世界、思考、価値観、文化を、milieuというメディアを通してお伝えできれば幸いです。

Text by 塩谷舞(@ciotan

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