「とてつもなく不得意なこと」があるすべての人へ。人間のリカバリー能力のおはなし

13,108 view

小学校の体育の時間、ハードル走をしているのにハードルの前にくると、ピタリと止まる女子が学年にひとりはいたかと思うのですが、私は、ああいう呆れてしまうほどに運動の出来ない小学生でした。

給食が終わってひとり絵を描いていると「塩谷さん、お昼休みはみんなとドッジボールをしなさい!」と先生に叱られるし、でも参加すると「足手まといがノコノコ来たで……」と同級生からはガッカリされるしで、まぁツラい。さっさとボールを当てられて外野に行き、運動場の地面にひとりで絵を描いて休み時間が終わるのをじっと待っていました(社交性…)。

そんな時に出会ったインターネットで「ここは運動神経の必要ない世界だ!文字と絵だけで他人様と仲良くなれるなんて最高だ!」と感動してのめり込むわけですが、好きこそものの上手なれで、気がつけばインターネットで文章を書いたり自己表現をするという筋肉が普通のひとよりも少し発達し、それが仕事になりました。インターネット万歳だ。

 

…と、どうしてそんな究極にどうでもいい話をしているかというと、1月27日にお邪魔してきた1→10HOLDINGS, Inc. (ワン・トゥー・テン・ホールディングス、略してワンテンさん)の豪華絢爛なオフィス移転パーティーで、非常に面白いお話を聞きまして、ちょっと昔のことを思い出しちゃったんです。

1→10代表取締役 澤邊芳明さん。日本財団パラリンピックサポートセンター開設にあたり、総合クリエイティブディレクターとして参画されています。

会場で待ち構えていたペッパー君とホッケーの対戦。負けました。やっぱりスポーツは苦手。

1→10さんの新しいオフィス、デザインはドラフトさんが手がけたそうです。引用元:PR TIMES

 

パーティーにはそうそうたるクリエイターや文化人が集まり、彼らの新たな節目をみんなでお祝いしました。そこで、トークショーも二部構成で開かれたのですが、その前半に登壇されたのはこちらの方々。

左から、1→10代表取締役 澤邊芳明さん、WIRED日本版 編集長 若林恵さん、慶應義塾大学大学院教授 中村伊知哉さん、GROOVE X代表取締役 林要さん、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会チーフ・テクノロジー・イノベーション・オフィサー 宇陀栄次さん

 

それぞれのお話のレベルが高すぎて、「もっと欲しい!」という内容ばかりだったのですが、中でも一番刺さったのが、ペッパー君の生みの親であり、現在はGROOVE Xの代表取締役である林要さん(@hayashikaname)の言葉。

「オリンピックは、肉体の戦いかもしれません。でも、パラリンピックは神経科学の戦いじゃないかと思っています。

たとえば、車だと左前のタイヤがパンクしたら運転出来ないですよね。でも人間は、失われたものがあると、残り3輪を拡張することが出来る。なにかが失われているから他が伸びる、というのは、他の機械ではありえないことです。ごく短時間に、一世代の間だけで最適化させていくのは、人間、動物のすごいところです。

そうやって捉えると、パラリンピックは『肉体的に劣っているんだけども頑張っている人たちの勝負』ではなくなってくるんですよね」

ーGROOVE X 代表取締役 林要さん

 

なるほど。たしかに、目をふさぐといつもより音がよく聴こえてくるし、触覚も研ぎ澄まされていきます。それは、先月大阪のグランフロントで参加した、暗闇の中を盲目の方のアテンドのもと進んでいくダイアログ・イン・ザ・ダークでもまさに体験したばかり。

 


神経科学の話とは少しずれてしまうけど、精神面でも似たような話かもしれない。冒頭に出した、みなさんにとっては非常にどうでもいい私の運動音痴昔話ですが、その能力があまりにも低いゆえに、異常なまでにインターネットが好きになったのだから。

そんなことを考えさせられたトークショーの全編は、こちらをぜひご覧ください。

 

 


会場に並ぶロボットたち

 

この場の主人(あるじ)である1→10の澤邊社長(@sawablo)は、高校時代の交通事故で手足がまったく動かなくなってしまい、それでも、ご自身が車椅子であることを隠しながら24歳でWeb制作会社を立ち上げ、オンラインで仕事をして……という歴史を歩んでこられた方です。

澤邊さんについては、2012年にご自身で書かれていたこのコラムがあまりにも衝撃的で、心にのこっていて、それを私が今ここで語ることはとても出来ないのだけれども。とにかくその真っ直ぐな人柄に、お祝いの場に駆けつけた人たちが魅了されている……ことは部外者の私が見ても一目瞭然。

左から、五輪エンブレムのデザイナー野老朝雄さん、澤邊さん、中川翔子さん


ちなみに、赤いドレスの中川翔子様は、1→10さんの開発した「CYBER WHEEL(サイバーウィルム)」に初試乗。

VRのヘッドマウントディスプレイを装着し、車椅子の車輪についた「ハンドリム」を回すと、最高時速60キロのスピードで(VR内を)駆け巡ることが出来るのだそう。


私は、こんなものを体験させてもらいました。

これは1秒(速すぎ)で人体をスキャンして、自動で3Dモデルデータを生成できる高速3Dスキャンシステムの「ANATOMe™」というもの。

通常の3Dスキャンは〜〜秒くらいかかるのですが、これは本当に1秒。そのぶんまだまだ粗いところもあるのですが、ちょこっと手作業で修正しつつ……

なんかこういう感じに

私の生き写しが

 

 

踊り出すんですわ……。

運動が苦手ですが、ダンスなんてもってのほかで、高校時代は体育の時間にラジオ体操してるだけで「塩谷の動き、アンガールズみたいやな」と囁かれ、後ろから「ジャンガジャンガ…」と効果音をつけられたほどの私です。

私がこんなに軽快に動くなんて、ありえない……。身体は私なのに、ありえないぞ……。という気持ち悪さがたまりません。でも少し嬉しい。

詳しくはこちらの記事をどうぞ。


いろんなエンターテインメントを楽しませてくれた1→10さんのパーティーは、すこし未来のゲームセンターみたい。ゲームで遊びすぎて、お酒も飲み忘れるわ、食事も食べ忘れるわという感じでした。

澤邊さんが24歳のときに京都でひとり立ち上げた1→10は今、1→10design、1→10drive、1→10Robotics、IMAGINEなど……9つのグループ会社を包括する、大きなグループに育っておられます。

 

ちなみに「どうして東京オフィスが天王洲にあるの?他の会社は渋谷とか汐留とかが多いけど…」と1→10のスタッフの友人に聞いたら、本社のある京都から品川が時間距離的に近いこと、埋め立て地はバリアフリーで車椅子でも過ごしやすいことと、そして創業時にとても良くしてもらった大切なお客さんが品川の会社だった…という思い出の地であることを教えてくれました。

“Ignite Everyone, Update Everything.”
「あらゆる人々の心に火を灯し、あらゆるすべてを刷新する。」

ここで標語になっている“あらゆる人”というのは、精神的であれ、肉体的であれ、あらゆるマイノリティを抱える人でもあるんだろうな。

クリエイティブ系の会社にしてはめずらしく、老若男女が駆けつけたパーティー会場を後にしつつ、自分のコンプレックスさえも包んでくれるような、やさしいものに触れたような夜でした。おしまい。

Text by 塩谷舞(@ciotan

RANKING

RECOMMEND

FOLLOW US